TSU×KU×RU 作る -mirai384-

秋も深まり、冬の足音もそろそろと聞こえそうな季節になりました。

世の中には様々な“もの”が溢れています。

今月の巻頭特集は『作る』。

“ものづくり”に携わる女性たちへのインタビューをしました。

ひとくちに“ものづくり”と言っても、実に様々なものがあります。

「家族から受け継いだ」「子供に喜んでもらいたい」

「伝統を受け継ぐ素晴らしさに感銘を受けた」など、きっかけは様々。

ものづくりの仕事ができる環境を手に入れるのは大変なことです。

常に新しい発想を求める、家庭いや子育てとの両立、

伝統文化を継承していくことの厳しさなど。

でも、根底には「ものづくりが好きだ!」という強い想いがあります。

今回は、そんな強く、輝く女性たちを紹介します。

レザークラフトを毎日の暮らしに ようやく見つけた わたしらしいスタイル

■オートクチュールの基礎を徹底的に学んだ学生時代

 光市役所向かいに品良く佇むちいさな間口のレザークラフトのアトリエ兼店舗『non-fragile』。光市出身の山本信恵さんは高校卒業後、広島の洋裁専門学校へ進み、オートクチュールを基礎から徹底的に学んだ。「有名ブランド店を回り、デザイン画のレポートの提出の日々。課題もとても厳しく、入学時に12人いた同期は3年後の卒業時にはたったの4人でした」。

 その後、服飾メーカーでのデザイナー職を経て、個人事業主として広島でオートクチュールの受注を始めた。既成にはない変わったデザイン性の服が欲しいという方々からの受注が多く入り、注文には困らなかったという。「最初からお客様の求めるイメージが強く、本当の意味でのオリジナリティを求め始めた頃でもありました」。この経験がのちのレザークラフトとの向き合い方に大きな影響を及ぼすことになる。その後、結婚し長男と長女が生まれた。子育てのために家庭に入っても服作りはやめなかった。長女の誕生を機に家族共々、光市に帰郷した。

■祖母からレザークラフトの道具を受け継ぎ、広がった世界

 母方の祖母がもともと革細工をしていた。「70歳から教室に通い始めたバイタリティあふれる人でした」と懐かしそうに話す。祖母が80代になり、「興味があれば道具をあげようか?」と、2004年に受け継いだ。現在使用している道具のほとんどは祖母から譲り受けたもの。

 カードケースやストラップなどの小物から製作をスタートした。「服飾にかかる知識を持っていたので、技術的な苦労はありませんでしたが、逆に、どういうデザインにしよう?と、とにかく作りまくりました」。思い浮かぶものを色々と作り、失敗作もたくさんあったという。洋裁学校時代の同期が洋服店を始め、山本さんの作品を商品として置いてもらうようになった。そのうちに、代わりに営業をしてくれる人が現れ、西日本地域の様々な店舗に自身の作品が並ぶように。「広島そごうに自分の作品が陳列販売しているのを見つけた時は喜びのあまり思わず、店員さんに声をかけてしまいました(笑)」。その後、様々な作品の注文が殺到したが、全て手作りで、作り手は自分のみ。新作を考える時間もないほど納期に追われるように。

■ようやく見つけたわたしらしいスタイル

 「ありがたいけれど、楽しさがない・・・」と自問の日々を重ねた末に、自宅アトリエを経て、2013年にアトリエ兼店舗である『non-fragile』をオープン。夫の最大限の応援には今も感謝しているという。店名には、壊れにくく、丈夫なものを作り続けていくということと、自分のあだ名をとの想いが込められている。

 財布、ポーチ、バッグ、スマホケース、手帳カバー、キーケースなど日々づかいのできる、シンプルで大人かっこいい作品の製作に没頭する毎日を過ごしている。「濡れてもシミにならない、使い込んでいくうちにしっとり艶や味が出る革を探し求めました」。牛革は6色、ハラコは3色を取り揃え、牛革xハラコの組み合わせは女性に人気だという。

 「新作を考える時が一番ワクワクします。それが形になった時の喜びは何ものにも代え難い喜びがあります」と柔和な笑顔で話す姿が印象的だ。「何か作らせて!」と、高3の息子や中2の娘が、たまにアトリエに来ては一緒に取り組むという心豊かな生活も楽しんでいる。

 「人々がもっと手軽にものづくりができる環境を作り、革の良さをもっと知ってもらいたい。でも、今はまだ常に作り手でありたいです」と話す山本さんの次なる作品を楽しみにしたい。

祖母から受け継いだ大切な道具たち。

1.コンクリートの打ちっ放しの床にナチュラルな木のカウンターと白いタイルがマッチした居心地の良い空間。

2.上:機種変にも対応できる、小銭入れ付きスマホポシェット。

右下:電子タバコ入れとしても使える小物入れ。

左中:栗ポーチ。革xハラコの人気の組み合わせで、それぞれ色を選べる。

non-fragile

光市中央5-1-23(光市役所国道側向かい)
TEL 0833-48-8885
営業時間 11:00~16:00 (来店予約がおすすめ)
定休日 日曜&不定休

プロフィール

JSA日本サロネーゼ協会

アイシングクッキーマスター講師

ジンジャーブレッドアイシング認定講師

『アイシングクッキー教室 Sweet Flowers』

LINE@:blt6746k

instagram:sweet.flowers.ih

砂糖は無限大の可能性 想像をカタチにするワクワクの毎日

■幼い頃の母との記憶 原点はその母の姿

 秋の柔らかい日差しが差し込む窓辺で自身のクッキーを手に笑顔で話す『アイシングクッキーSweet Flowers』代表の藤田聖子さんは岩国市出身。周南市の住宅メーカーに勤務後、結婚、出産を経て当時住んでいた広島で転機が訪れた。次女の2歳の誕生日のお祝いに娘が好きなキャラクターのクッキーを自作してみたが、納得がいかず、インターネットで検索したところ、一瞬でアイシングクッキーの世界に魅了された。すぐに同市内のアイシングクッキー教室のレッスンを体験。「母は、粘土細工やお菓子作りなどが得意で、私が幼い頃クリスマスにお手製のお菓子の家を作ってくれました。その時の感動は今でも忘れられません。凝り性なところも含め、母の血を継いだのだと思います。今思えば、私の原点はそこにあったのかもしれません」。アイシングクッキーの奥深さと可愛さや達成感を感じ夢中になり、創作意欲がふつふつと沸いた。その後本格的なレッスンに切り替え、2015年JSAアイシングクッキー認定講座修了、翌月に自身の教室『Sweet Flowers』をはじめた。

■アイシングクッキーの世界観を伝えたい

2016年、夫の転勤を機に夫の実家のある光市に転居。当時は『アイシングクッキー』の認知はまずまずで、公民館などで親子レッスンなどを通して少しずつ広めていった。「アイシングクッキーの魅力は2種類。贈られた側の、箱を開けた瞬間のわぁぁ〜!!!という感動した表情や自然とこぼれる笑顔。作る側には、私にもできた!という達成感や時間を忘れて製作する事でリフレッシュにも。食べると無くなるという儚さも魅力のひとつです」。と藤田さん。

スキルアップにつながるレッスンを提供したいという想いから、2017年にJSAジンジャーブレッドアイシング認定講座修了、JSAアイシングクッキーマスター試験に合格。現在までに10人程の認定講師を輩出する。

幼少期から物作りが好きだったという藤田さんの手から作り出される作品は、繊細で可愛く、相手を想う気持ちも一緒に箱に詰めて贈られる。思わず笑顔になれる見ても楽しく、食べても美味しい魔法のお菓子。

「私が出逢ったあの感動をより多くの人に感じてもらえるレッスンをすること、家庭との両立をしつつ、製作活動時間を確保する事」が今後の課題だという。子育て真っ最中の母親らしい答えに共感した。

1.キャプション:藤田さんが作ったアイシングクッキー。淡い色使いがとても可愛い。

2.レッスン中の様子 

紙すきは私のライフワーク 山代和紙を次世代につなげたい

■書道とリンクする紙すきの世界

周南市の山間に高齢者が中心になり活動している施設がある。ここで『山代和紙』作りに取り組む長弘京子さん。福岡出身。幼い頃より書道を習い、自身も書を教えていた。結婚を機に鹿野へ移住。「その頃は、まさか自分が紙すき職人になるとは思ってもみなかったです。でも、書道を続けていたからこそ、紙には興味がありました」。そう言って長弘さんは自身が作った山代和紙の作品を並べて順に見せてくれた。触れると、ほんのり温かさを感じる。「均一ではない厚み」が、より「人の心」を感じさせてくれる。

山代和紙は、江戸時代の『三白政策』(米・塩・紙の生産を奨励するという長州藩の施策、)の一環で誕生した。戦後に一度途絶えてしまうものの、再び息を吹き込んだのが、昭和54年に建設された『周南市鹿野高齢者生産活動センター』である。紙すき職人の原田さん(80歳・現役)が後継者を探されている事を知り、同施設で体験をする。そこで伝統を受け継ぐ素晴らしさや紙すきの魅力を知り、周りの勧めもあり原田さんの元で修業を始める。技術の習得には長年を要した。

「紙すきの技術は、すぐには得られません。書道の世界も地道に鍛練を積む。通じるものがありました」。

■山代和紙を伝えるために、挑戦は続く

職人となり、今年で12年目。

イベント参加や、講演などで次世代に繋げるための活動も積極的。今後もセンターで発信できない『伝承活動』が、長弘さんの使命となる。

「人々の心に山代和紙の魅力が確実に届くように、地道に伝えていきたいです。最近は若い方がこの山代和紙を広めたいという声や、和紙を使って小物を作りたいという声もいただきます」。現在は制作活動の傍ら、イベントで作品を展示・販売やワークショップ、講演会を精力的に行っている。だが、決して甘い世界ではない。だから、厳しい現実も伝える。

和紙作りは、1月からがシーズン。水は冷たく、紙すきの道具は重くて体力が必要。そして和紙作りで生活ができるかと言えば難しい。一筋縄でいかない所や紙や糊の原材料の植物を栽培する本当に全て手作りの所も含め『山代和紙』なのだ。

「紙すきで心がけていることは、精神を無にすることですね。“真っ白い和紙はかみ(神)すきの色”ってよく言っています。心の状態が紙に表れるので心を整えながら、これからも“かみすき”に取り組みたいです」。

笑顔の中で、時折見せるストイックなまなざし。そこには、凛としたかみ”がいた。

1.人の心を感じさせてくれる長弘さんの作品たち。

2.体験に来た子供たちに指導する様子。

周南市鹿野高齢者生産活動センター

TEL:0834-68-3640 FAX:0834-68-3641

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